車やバイクのエンジンオイルは定期交換が基本ですが、世の中には色々な種類のエンジンオイルが存在します。
どのオイルが自分にあっているのか?純正オイル以外にもチャレンジしてみたいけど、どれを選べばいいのか分からない方も多いと思います。
そこで車屋である私が、エンジンオイルやオイルエレメントの交換時期は、いつ頃がベストタイミングなのかを、併せてアドバイスいたします。
最後まで読んで自分に最適なオイルを見つけましょう。
エンジンオイルとは
自動車には様々なオイルがあり、その中でも最も交換スパンが早いのはエンジンオイルです。名前の通り、エンジン内部を循環し部品の潤滑や冷却、エンジン内部の汚れを取り除く役目を果たします。
エンジンオイル交換の必要性
自動車業界でエンジンオイルの分かりやすい例えがあります。
自動車のエンジンを人間の心臓に例えると、エンジンオイルは血液にあたります。エンジン内部にも、血管のように細かいオイルの通り道があり、オイルが循環しています。
人間には肝臓や腎臓などで、血液をろ過し尿という形で老廃物を排泄することで、血液の純度を保つことが出来ますが、現在の4サイクルエンジンはそれが出来ません。
自動車には、オイルエレメントと呼ばれるフィルターが、肝臓や腎臓のようにエンジンオイルをろ過し、綺麗に保つことが出来ます。
しかし、限界を超えると、フィルターが詰まってしまいオイルが流れなくなってしまいます。
人間は、ご飯を食べて血液を生成し老廃物を排出する事が健康を維持出来ます。
しかし、自動車はオイルを生成し排出することも出来ないので、エンジンオイルは定期的に交換をしなければならないのです。
人間の血液もコレステロール値が高くなり、血液がドロドロになると、動脈硬化等の、健康不良を起こします。
自動車の場合オイルラインが詰まるとエンジンが壊れます。
エンジンを壊さない為にも、エンジンオイルとオイルエレメントは定期的に交換しましょう。
2サイクルエンジンは、オイル交換不要。2サイクルの場合は、エンジンオイルと燃料を一緒に燃焼するので、交換ではなくて継ぎ足しになります。
二輪に多かった2サイクルエンジンは燃料とオイル同時に燃やすので、排気ガスは非常に煙っぽいです。環境に悪いので2サイクルエンジンは、ほぼ絶滅しました。
ちなみにオイルはエンジンの特性上専用オイルになるので、オイルの表記が2ストーク、2サイクル、2stオイル等になっています。
エンジンオイルを購入する際は、必ず2サイクル、4サイクルの確認しましょう。
オイル交換の目安
エンジンオイルの交換時期は、車種にもよりますがメーカー指定10,000~15,000kmまたは1年交換の車種が多いです。
意外と距離を走っていても問題ないような気がしますが、日本で使用する場合は、早めの交換をオススメします。もしあなたが毎日、法定速度で高速道路を走行していれば、メーカー指定のオイル交換で問題ないです。
しかし、ほとんど方がこの条件にあてはまりません。
シビアコンディション
実際日本での自動車の使用環境は、信号待ち、渋滞、近所の買い物等の短時間の短距離走行Stop&Goがほとんどです。このような仕様環境をシビアコンディションとよび、オイル交換のサイクルを早める事を自動車メーカーで推奨しています。
1回の走行距離8km、ブレーキの回数が多い、アイドリングが多い場合はシビアコンディションになります。渋滞の多い日本で自動車を使用する場合、半数以上の方が該当すると思われます。
シビアコンディションにあてはまると、基本的な使用環境より半分以下でのオイル交換を求められます。
なので、エンジンオイル交換の目安は5,000~7,000km(ターボ2,000~4,000)6ヶ月以内を目安に交換しましょう。
オイルは乳化する
冬場に多いのですが、走行時間が短い(30分以内位)と、中途半端にエンジンが暖まり、外気温度が低いと、エンジン内部が結露します。
結露で発生した水分が、ドレッシングのようにエンジンオイルと混ざり乳化し、エンジンオイルとしての役割を果たさなくなります。このような症状を、エマルジョンと呼びます。
エマルジョンを予防するには、キチンとエンジンに熱を入れる事です。具体的に言うとエンジンが完全に暖たまった状態(1時間位)で走行すると、水分が蒸発します。
もし、症状が改善出来ない場合は、エンジンオイルを交換しましょう。
オイルエレメント
オイルエレメントは画像のようにフィルターが張り巡らされており、金属片や汚れを集めエンジンオイルをろ過し、綺麗に保つ役割を果たします。サイクロン掃除機のフィルターと似たような役割です。
掃除機のフィルターも掃除しなければ、吸引力が落ちゴミを吸えなくなってしまいますが、オイルエレメントも同様に汚れが溜まるとオイルが流れにくくなり劣化します。
オイルエレメントは基本的に使い捨て構造になっています。オイル交換2回に1回交換すれば十分です。
オイルエレメント自体も500~1,500円位なのでケチらず交換しましょう。
エンジンオイルの選び方
エンジンオイルを選ぶポイントは大きく分けて「規格」「粘度」「分類」があります。それぞれの意味が分かれば、オイル選びが簡単になります。
エンジンオイルの種類
オイルにはベースオイルがあり、ベースオイルに添加剤を合わせたものをエンジンオイルと呼びます。ベースオイルは大まかに3種類に分ける事が出来ます。
化学合成オイル(全合成油)(シンセティック)
原油に高度な精製を行う事で、不純物を可能な限り取り除き、分子量を一定に調整したものです。耐熱性、始動性、対劣化性能に優れた高性能オイルになります。ターボ車、スポーツカーや高排気量車などの熱を持ちやすい車両にオススメです。
しかし価格は1ℓ/3,000円オーバーが多いです。
高性能である化学合成油の中でもさらに分類され、グループ3「VHVI」グループ4「PAO」グループ5「エステル」に分けられます。
- グループ5「エステル」ほぼレース用の超高性能オイルですが、水分を含みやすく短命
- グループ4「PAO」日常で使える化学合成油。エステルもそうだがオイルシール攻撃性有
- グループ3「VHVI」鉱物油をハイドロクラッキングしたもの。エステル、PAOに比べ性能は劣るが比較的安価で購入できます。
※グループ3「VHVI」は海外では化学合成油扱いではなく、鉱物油扱いになります。
部分合成油(半合成油)
鉱物油に化学合成油を20%以上まぜたもの。鉱物油の弱点部分を補っており、性能とコストパフォーマンスのバランスの取れたオイルをグループ2「部分合成油」と言います。
たまに高速道路や、長距離を走る方にオススメ。1ℓ/1,500円位です。
鉱物油(ミネラル)
昔から存在するエンジンオイルの元祖。原油を蒸留して精製したもので、オールマイティに使えコストパフォーマンスは非常に高いです。
不純物があり分子量がバラバラなため性能は標準レベル。グループ1「鉱物油」とよびます。1ℓ/500円位です。
合成油に比べエンジン始動性、燃費は劣り、また揮発性があり若干オイルが逃げてしまうのがネックになります。しかし鉱物油を使い続ける事で、車が故障するわけではありません。普通車の純正オイルのほとんどが鉱物油です。
化学合成オイル(全合成油)を入れてはいけない車両もあります。古い車両(90年以前位)の車両に使用しているゴム製のシールパッキンの適合性が良くなく最悪オイルが漏れてしまいます。
化学合成オイル成分のPAOはシールを縮めてしまい、エステルはふやけて伸びてしまいます。漏れだしたらオイルを鉱物油に戻しても手遅れです。
古い車は素直に、鉱物油かVHVIメインの化学合成油を使いましょう。
エンジンオイルの性能を決める規格
オイル性能は規格がありAPI規格とILSAC規格の2種類あります。
- API規格はSA、SB~始まり現在(SOは存在しません)SPが最高規格で13段階に分かれます。
- ILSAC規格はGF-1、GF-2~始まりGF-6が最高規格で6段階に分かれます。
「SN」と「GF-5」は規格は違いますが、同等品質なので両方表記の商品がありますが、API規格のみの表記が多いです。2020年5月に施行した「SP」か「GF-6」規格を選べば間違いないです。
アルファベットや数字が進むにつれて、浄化性能や耐久性の他に環境への優しさも向上しますのでなるべく最新規格の物を選びましょう。
エンジンオイルで最重要視するのは粘度
粘りが強い物を「固い」逆にサラサラと粘りが弱い物を「やわらかい」と表現します。
エンジンオイルの粘度にはSAE規格があり「5W-30」「0W-40」といった表現します。この表現方法を「マルチグレード」と読み、前半の数字は低温時のオイル性能「W」はWinterの略、エンジンの始動性に影響します。
5W-30℃ 10W-25℃ 15W-20℃ 20W-25℃に対応します。低温側の数値が低ければ粘度による抵抗が少ないのです。一番やわらかい0Wは-35℃でもオイルが凍らずに性能を発揮できます。
後半の数字は、高温時のオイル性能なので、数字が高いほど熱に強くなり、ターボ車やスポーツカー等の高温になり易いエンジンに最適です。ちなみに高温時のオイル性能のみを「SAE20」「SAE30」といった表記したものを「シングルグレード」と読みます。
数値が高ければ高いほど性能が良いと言われますが、高粘度オイルは抵抗が増えるので燃費が悪くなります。最近の自動車は燃費に特化しているので「0W-20」等の低粘度オイルが多いです。
オイルの粘度を変更さる際は、高温側の数値を純正推奨オイルより下げない様にしましょう。純正「5W-30」に対して「0W-40」「15W-50」等はよくあるのですが、「0W-20」といった30から20に下げるのは、大変危険です。
純正推奨粘度はボンネット裏に貼ってあるラベルや取扱説明書に書いてあります。もし分からなければディーラーに問い合わせるのも手段です。
オススメのエンジンオイル
エンジンオイルを選ぶポイントは理解できたと思いますが、オイルメーカーの特徴は分からないと思いますので、オススメのエンジンオイルメーカー3選を紹介します。
モービル
多くの自動車メーカーにオイルを提供するエクソンモービル社です。一般車両からレクサス「LFA」、日産「GT-R」といった高性能スポーツカーの純正指定になってます。
カー用品店、エネオス、ホームセンター等、多くの店舗で購入できます。また、ホームページで、簡単な質問に答えて最適なオイルを選べる「オイルセレクター」が便利です。
オイル選びが初めて、オイル交換はガソリンスタンドやカー用品店、信頼できるオイルメーカーを選びたい方にオススメです。
TAKUMIモーターオイル
歴史は浅いが、爆発的な人気を集めるTAKUMIモーターオイルです。一般認知度は低いですが、レースやドリフト業界では人気のメーカーです。
メーカー直送のネット販売、広告費削減を行い、徹底的に流通コストを削減し良質なオイルを低価格で購入できます。また、街乗りからサーキットまで豊富なラインナップが特徴です。
エンジンオイルは自分で交換する方、週末はサーキット走行を行い、オイル粘度にはこだわりたいコスパ重視の方にオススメです。
WAKO’S
車好きなら一度は耳にしたことある和光ケミカルです。2輪レースやスーパーGTメイン車両のスポンサー活動を行う等、世界的にも有名なメーカーです。
妥協のない製品作りは、折り紙付きです。オイル以外の添加剤や、カーワックス等のケミカル用品も人気です。以前は自動車整備工場にしか卸売しませんでしたが、今はカー用品店でも購入出来るようになりました。
レースカーと同じオイルを使いたい、バイクにも同じオイルを使いたい等、物選びに妥協したくない方にオススメです。
最後に
もし記事を読んでエンジンオイル交換に関心を持ったのならば、まずは自分の車のスペックや使用環境を調べましょう。
せっかくのエコカーに超高性能のオイルに大金出して交換しても、性能を発揮出来ません。さらに燃費が悪くなります。逆に標準レベルのオイルでサーキット走行を行えばエンジンが焼き付き壊れてしまいます。
まずは、高速道路などを利用しエンジンの回転数が高い状態で走行するのであれば、化学合成油等の種類を変えてみたり、冬は寒いので始動性の良い粘度に変えてみましょう。もし体感出来たのならば、さらに突き詰めてみるのも面白いです。
しかし、高性能なオイルを使用しても、距離を多く走れるわけではありません。高額な化学合成油を入れて指定距離以上走行するよりも、安い鉱物油をまめに交換している方が良いと言われています。
あくまでもエンジンオイルは定期交換が基本です。お財布と相談しながら、適材適所なエンジンオイルを選びましょう。